年頭所感
全国鉄鋼販売業連合会
会長 林喜裕
劣悪な環境のなかでも活路を求め
新年あけましておめでとうございます。
新たな年、平成22年を迎え、諸般の情勢、鉄鋼業界を巡る様々な事柄、また全鉄連活動の報告並びに展望などを述べ、新年のご挨拶にしたいと存じます。
時代は変化してゆくとは当然のことではありますが、あまりに早い移り変わりに戸惑いを覚える向きも多いのではないでしょうか。その意味で言うなら昨年夏の政権交代はただでさえ目まぐるしい世の中に、アクセルを踏み込んだようなものだったかもしれません。後世から見れば歴史的な変遷なのかもしれませんが、今を生きる庶民にとっては、政治というぼやけた実体と定まらぬ方向性を垣間見るだけで、何も確かなものを感じられない不安に陥っています。
昨年の鉄鋼業界は、大部分の需要が崩落した状況からスタートしたと言っていいでしょう。そして、1年が経過してどのように変遷したのか。こと内需に関しては停滞したままでした。むしろ悪化したとの見方もあるようです。一方、輸出関連産業は新興国の旺盛な外需に支えられ早い立ち直りを見せました。大きな落ち込みからの回復過程を概観すれば、産業、業態、地域性などにより跛行性が見られ、全般的には回復の足どりは重いものがありました。不況時に輸出に傾斜するという過去からの日本経済のパターンが当てはまったことになります。
では、輸出という逃げ場のない国内鉄鋼市場を、専らの営業ステージとする私ども鋼材販売業者の昨年1年を振り返りますと、このような酷い年はなかったと多くの会員諸氏の嘆息が聞こえてきそうです。極端な荷動き不振、需要激減、在庫評価損、信用不安増幅など採算性を阻害する要因に取り囲まれ、日々苦闘してきました。さらには状況回復の展望が開けないもどかしさもありました。山高ければ谷深し、の例えはありますが、先に谷が幾つも見えてしまっている観があります。経営環境の劣悪さを映すように、長年の企業経営に終止符を打つ同業者もあり、事態の深刻さを浮き彫りにしました。
このように苦渋の1年でありましたが、全鉄連は設立当初の理念である「鋼材販売者の地位向上」「商道徳の高揚」などを掲げ活動してまいりました。需要激減に見舞われた昨年2月には「不況克服の方策は内需の喚起から」とするアピールを公表し、一刻も早い状況改善を関係各方面に要望しました。さらに、年末には「今ある危機的状況を回避するために」とする2度目のアピールを発表し、全鉄連加盟24団体こぞっての訴えかけを行いました。このように鋼材販売業者の意見を集約して、世に問うのも全鉄連の役目だと思っております。
それら対外的な活動と並行して全鉄連は6月に岐阜市において、地元の岐阜県鋼材販売協同組合の全面的な協力を得て「危機を乗り切る信念と気概を」とのスローガンのもと定時総会を開催しました。また、20年度まで毎月開催されていた鉄流懇は、3カ月に1回の開催と運営方法が変更されましたが、意義ある情報交換の場という点では変わりはありません。四半期に1回開催される鐵鋼課ヒアリングでも鉄鋼流通の現状、問題点などを説明し善処を求めております。さらには本年度より普通鋼電炉工業会との懇談会を開催し、意見交換を行うことで製販互いの立場をより深く理解することができたと思います。
明るい展望が開けない年明けではありますが、過去にも幾多の景気変動があり、その荒波のなかでも当会会員は地域に密着し、あるいは独自のビジネスモデルを構築して乗り越えられてきました。このたびの難局にあっても怯むことなく邁進されるものと信じています。そして、全鉄連がそのようなみなさまの手助けになれば幸いと考えております。最後になりましたが、全鉄連は昭和45年の発足以来、本年で40周年を迎えます。その記念事業を定時総会と併催して6月4日、東京で挙行します。その節には多数のみなさまのご参加をお願いする次第です。
それでは今後とも関係各機関の一層のご指導とご鞭撻をお願いすると共に、会員各企業のご隆盛を祈念し、合わせて当会へのご協力をお願いして年頭のご挨拶とします。
以上
PDFファイルはこちら⇒全鉄連・林会長の年頭所感